「パンはセンス」「akiraマジック」と数々の名言を放つ。
パン屋であることは自分の天職であり、生涯現役を貫きたい。
プロ向けのセミナーの講師をはじめ、日本最大のパン博である、「MOBAC SHOW」など数々の展示会で製パン講師を務め製パン技術と味わいで多くの人を魅了している。
その活躍の場は日本のみならず米国、台湾、ロシアにもおよぶ。
また、開業希望者への技術指導や、同店内工房での製パン講習会も定期的に開催、人気を博している。
パン工房風見鶏でしか味わえない「日本のパン、飽きのこないパン」を目指し、改良と開発を日々つづけている。そのために氏自ら店頭に立ち、開発中のパンを客に試食してもらい感想を聞くようにしている。客の第一印象やダイレクトな評価はまさにアイデアと改善と進化の宝庫。自らPDCAを回し常に新しい試みとチャレンジを続けている。氏のひらめきや発想を計画(Plan)し、工房で製パン(Do)、店舗で客の反応を見ることで評価・分析(Check)し、改善(Action)のサイクルを自然と何度となく回し、繰り返していくことで精度が高まり目標を確実に効果的に達成、これまでにない、パンの可能性をひろげている。この進化があるからこそ、“いつ来ても新しいパン”、“ここでしか味わえない唯一無二のパン”に出会えるので客足が途絶えることがない。
氏のアイデアから生まれる個性あふれるパンはなんといっても生地の美味しさに心を砕いている。フィリングや副材料ではなく、かみしめた時の生地の味わい。プレーンなパンであるほど生地へのこだわりと熱意を感じる。
その生地の味わいはいくつもの発酵種を組み合わせることで生まれている。パン工房風見鶏を開業し、数年が経った頃に氏がたどり着いたのが「ホシノ天然酵母パン種」だ。
現在、パン工房風見鶏ではホシノ天然酵母パン種を軸としていくつもの発酵種を組み合わせている。ホシノ天然酵母パン種の「生種」は発酵力がゆっくりでじっくり時間をかけ小麦と水和することで味わいが増す。さらにその「生種」をつかって長時間熟成させた「中種」、そして「ルバン種」が加わる。ゆっくりとした発酵の「生種」に「中種」を加えることで醗酵力にバネを与え、窯伸びが良くなる。「中種」自体でも生地を作れるが「生種」と組み合わせることで醗酵の時間をコントロールすることができ、さらに「ルバン種」を加えることでさらに旨味や深みが付加され複雑で奥行きのある生地ができる。3種類の特徴ある発酵種を自在に操ることで安定した醗酵力を得て生地の味わいに付加価値と魅力が増す。生地の味わいを高めつつ安定した醗酵力が作業効率も上げていく。さらにこの種でつくる生地は高温焼成にも向いていて水分量の多い生地や焦げやすい具材を入れた生地でも、高温の窯で短時間でサッと焼き上げることができる。
2016年に食生活文化賞受賞
昭和55年から続く食生活文化賞は毎年食に関する各分野のスペシャリストに与えられる栄誉ある賞。福王寺シェフは数多くの展示会で講師を務められ、製法の紹介、生地の扱い方の理論、独創的なパン作りとその味わいを発信し続けて来られた。小麦の醗酵文化と日本の伝統的な醗酵文化を融合したパン作りを提案し、斬新なアイデアと個性的な新商品開発が評価されての受賞。
近年では後進の育成にも力をいれ、様々な講習会、展示会などで惜しげなく技術の伝授をし、子弟やファンを増やしている。
同店舗内の工房で月に一度開催される「風見鶏製パン講習会」は日本全国から足しげく通うセミプロから家庭製パンを楽しむ方まで多くの参加者で常に満席の状態(現在は休講中だが動画配信を行っている)
「風見鶏」とは鶏をかたどった風向計。ヨーロッパの教会や住宅の屋根の上に取り付けられ、魔除けとしての意味合いもある。
日本の神戸市には「異人館風見鶏の館」があり市のシンボルマーク的存在となっている。1977年神戸を舞台に放映されたNHK連続テレビ小説「風見鶏」。大正時代にドイツ人パン職人と国際結婚した女性が神戸でパン屋を営み多くの人々から慕われていくまでを国際色豊かに描いたこの作品に、当時高校生だった福王寺氏は感銘を受け、屋号の由来となった。
生まれも育ちも埼玉。高校生の頃にアルバイトをした「リトルマーメード」のパンの美味しさに驚きを覚えパンの世界へと進んだ福王寺氏。高校卒業後は「アンデルセン」にて本格的に製パン技術を身につけていく。
28歳で埼玉県浦和市(当時)に「パン工房風見鶏」を開店、16年に渡り営業し現店舗(さいたま市)へ移転オープン。
現店舗は2階建て。1階は店舗と工房、2階には休憩室や応接、書斎、浴室トイレ。和室もありスタッフの慰労会などでも使えるようにデザインされている。スタッフのひとりひとりがしっかり仕事のできる作業スペースを取れること、お客様が心地よくパンを選び買いやすいスペースをとること、吹き抜けをつくることでより広々とした印象を持たせること、2階は仕事から離れリフレッシュできる空間になること、など、氏の思い入れがたっぷり込められた店舗となっている。